PMO plus

利用者の事故が多発したことで、数年前から都市における駐車場配置の適正化や機械式立体駐車場の安全対策が言われ始め、ようやく駐車場に注目されるようになりました。そうでなくとも、都心部の2～3割を占める駐車場の在り方は、都市再生の要だともいえます。

だからといって、安全性や適正な配置だけに気を付けて建設、もしくは一部改修すれば解決するという話ではありません。実際に人や車、モノが流れ始める都市環境を想定することはもちろん、間違いのない維持管理や無理・無駄のない運営ができてこその駐車場設計、そして「まちづくり」なのだと思います。

2020年に向け、さまざまな交通インフラが整備される日本にあって、若者の車離れや最寄りの交通インフラから目的地までの誘導が課題となっています。後者を私はマーケティング用語でいう「ラスト1マイル」にかけて、「最後の2キロメートル」と考えます。都心部や地方を問わず、せっかく幹線道路や鉄道網が充実しても、そこからまちの中心部まで誘導できる交通基盤が整っていない。車で行きたくても駐車する場所がないなどの理由で、なかなかまちに人を呼び込めない事例が後を絶ちません。

そうした「最後の2キロ」は海外でも同様で、ここ十年ほどで一気に車社会が発展してきた中国やその他のアジア諸国でも似た問題を抱えていたり、まだその問題に気付かぬまま都市計画が練られていたりします。道路や駐車場などのインフラが十分に整備されている日本とは違い、人や車の動線をまちづくりに反映するという視点すらないことも……

そのような状況下でもあれば、国内外から予期せぬ相談話が持ち込まれることがあります。駐車場の企画・設計はもちろん、運営・管理に60年近くも携わってきた私に、これから開発するエリアの「都市デザイン」や「地下空間デザイン」に参画してくれないかという依頼です。
まちの中にどのような動線を築けば、快適な人や車の流れが生まれるのか。また、今後数多くの来街者を誘致し続けられるのか、などについての相談です。日本はもとより、海外諸国でもようやく駐車場ありきの視点から都市計画が考えられるようになったことは、長きにわたって駐車場の価値向上やホスピタリティにこだわってきた私にはまたとない朗報です。

海外での駐車場づくりに参加できること、そして国内企業と海外企業のさまざまなビジネスモデル実現のための“懸け橋”になれるということ。その結果として、“新しいまちづくり”に貢献できること。長きにわたって思い描いていた駐車場事業のゴールイメージが、ここにきてようやく明確なかたちになったような気がいたします。

1998年に駐車場コンサル・管理運営会社の株式会社駐車場綜合研究所を創立し、それからおよそ10年後にマザーズ上場。そしてまたそこから10年のときを経て、世界規模の駐車場プラットフォーム事業を目指す現社を設立。決して意図して得られた成果ではありませんが、社会の動きや時流の転換期を見据え、機を逃さず挑戦し続けた結果が今日につながっているのでしょう。

そうしていままで積み上げてきた私の実体験や知見、ノウハウが、未来のまちづくりに生きること、またさらなる挑戦ができる場が生まれそうないまの環境には感謝しかありません。恐れず、喜んで「一歩前に」、足を踏み出し続けたいと思います。